39歳・はじめての流産(1)〜自然排出を選択した理由〜

妊娠・出産

念願の3人目の妊娠

むかしから、子どもを3人授かれたらと夢みていた。
39歳、念願の3人目の妊娠だった。

とはいえ、この時、次女はまだ生後9ヶ月。授乳もしっかりしていた。

思ったよりも早いタイミングだったので、ボロボロだと思っていたアラフォー子宮の見えない回復力にただただ驚くとともに、年子育児にこの身体が持つのかという不安とで、心の中は秋空のようにぐるぐるしていた。

そんな中、少しずつ家族みんなの気持ちが新しい命を迎える方向に歩みだした頃・・・お腹の中の胎嚢(たいのう)が育っていないと医師から告げられた。

いわゆる、「稽留(けいりゅう)流産」の診断だった。

稽留(けいりゅう)流産とは

初期の妊娠における「流産」の状態には、大きく分けて3つの種類がある。

切迫流産
妊娠は継続しているが、少量の出血や腹痛を伴い、流産のリスクが高い状態。
安静にすることで、流産を防ぐ可能性が十分にある。

進行流産
出血や腹痛を伴い、胎嚢(たいのう)を含む子宮内容物の排出が進行している状態。
この状態からの妊娠継続はほぼ不可能と考えられる。

稽留流産
自覚症状がほとんどなく、胎内で赤ちゃんが死亡している状態。
エコーなどの診察で、胎嚢が育っていない、胎芽や心拍確認ができないといった状況から判断される。

私の場合は、流産の診断確定まで、次のような経過をたどった。
(※妊娠週数は、最終月経から計算したもの)

  • 6週目:妊娠検査薬で「陽性」を確認。
  • 7週目:産婦人科を受診、胎嚢を確認(4〜5週程度の大きさ)。
    心拍は確認できず、排卵日がずれた可能性が高いとのことで、再受診の予約となる。
  • 9週目:ピンク色のおりものが出はじめ、少量の出血が続く。
  • 9週目:出血から数日後、再受診。
    胎嚢が前回の受診時からあまり育っておらず、心拍も確認できず。稽留流産の診断。

手術療法(掻爬)か、待機療法(自然排出)か

稽留(けいりゅう)流産と診断された場合、その後の対応として2つの選択肢がある。

手術療法(掻爬[そうは])
子宮内容物を掻き出す手術。中絶手術と同じ。

<メリット>
・不正出血の期間を長引かせることなく、子宮内をきれいにできる。
・計画的に処置が行える。
・診断から回復までの時間を早めることができる。
(次の妊娠を早めに希望している場合は、手術療法が勧められる。)

<デメリット>
・前処置に痛みを伴う。
・術後に痛みや出血を伴う。
・器具を使った処置により、子宮を傷つけるリスクを伴う。
・金銭面での負担がある。

待機療法(自然排出)
子宮内容物が自然に排出されるのを待つ対応。

<メリット>
・自然排出後の子宮の回復は早いとされる。
・子宮を傷つけるリスクがない。
・金銭的な負担がない。

<デメリット>
・いつ排出されるか分からないという不安を伴う。
・排出時に陣痛のような痛みを伴う場合がある。
・最終的に手術療法となる場合がある。
(子宮内容物がきれいに排出されず残る不全流産となった場合や、一定の妊娠週数を超えた場合など。)

稽留(けいりゅう)流産の場合、対応の選択は、基本的に妊婦の意向が優先されるようだ。

私が受診した医師からは、手術療法が一般的であるというニュアンスの説明があり、1〜2週間後の手術を勧められた。もちろん、手術日を待つ間に自然排出される可能性もあるとの説明もあったが、最終月経からの計算では妊娠週数も随分と進んでいたため、そうのような判断になったのだろう。

しかし、私には、どうしてもその場で手術日の予約を取る決心は付かなかった。一度判断を持ち帰り、夫に相談することにした。

自然排出を選択した理由

目の前に敷かれた「手術」というレール

9週目に入り、少量の出血が続いていたため、「もしかしたら…?」という心の準備はできていたはず。

しかし、「掻爬(そうは)手術」と「自然排出」という選択肢を目の前に出されたとき、冷静を装っていたとはいえ、やはり私の心は「流産」という状況に追いついていなかったのだと思う。

これまでの2回の妊娠は、おかげさまで深刻なマイナートラブルは一切なく、出産もともに安産だった。「まさか自分が流産を経験するなんて…」という感情もどこかにあったに違いない。

また、医師からは「胎嚢か育っていない」という表現のみで、「死んでいる」といった決定的な言葉は一切なかった。配慮の上での表現であったことは承知しているが、その曖昧な表現により、諦めきれない気持ちがどこかに残ってしまっていたのだと思う。

クリニックの待合室で待機していた夫に診断結果を伝えると、「妊娠の15%は流産だったよね、よくあることだよ」というコメント。男性は触れる機会が少ないと思われる「流産」に関する数字が、しっかり頭にインプットされているあたり、さすが理系だな!と感心。思わず笑ってしまった。

兎にも角にも、医師との会話では、「掻爬手術」が私の目の前に敷かれている唯一のレールだった。それを受け入れるために与えられた検討時間だったように思う。

納得できる自分の答えを出す

今後の対応について話し合ったところ、夫の意見は「自然排出を待つ」というものだった。

この言葉を聞き、正直我に返った気分だった。与えられたレールに誘導されかけていたマインドに、一気に思考力が蘇ってきた。

もう一度、自分の頭で考えてみよう。

流産の基礎情報というものは、妊娠を経験した人ならば一度は目にしている情報かもしれない。むしろ、リスクヘッジとして日本で執拗に説明される流産情報は、多くの妊婦たちの不安を無駄に煽っているようにも思う。

しかし、大抵は正確なインプットではなく、実際に経験してみないと他人の体験談などはそうそう細かに記憶に残っているものではない。私も今回の診断を受け、改めて色々と調べる中で、ようやく実感を伴って流産について理解した。

インターネットとは本当にありがたいもので、いろいろなエピソードに触れることができた。多くの流産経験者たちが、どのように選択をしていったのかを知ることができた。そして、それらは自身の心を整理する絶大な助けになった。

大切なのは、そこには模範解答などなく、すべての選択が正解だということ。

私自身も、自分なりの「納得できる答え」を出す必要があった。

私の願いは、自然に生まれる手助けをすること

私たち夫婦は常々、「自然なお産」を求めてきた。

赤ちゃんは、自分のタイミングで、自分の力で生まれてくるもの。
母親や家族は、それを手助けするだけ。

私は、今回も赤ちゃんと自身の身体の自然な営みを見守りたいと思った。

夫は、「亡くなって外に出る必要があるのなら、きっと自ら出ようとするだろう」と考えたようだ。出産予定日を大幅に過ぎ、助産院での分娩可能期限ギリギリにマイペースに生まれてきた次女の出産に立ち会った夫にとって、ごく自然な発想だったように思う。私も、同じ考えだった。

手術経験のある実母は、手術による子宮への負担を心配していた。私もその不安がとても大きかった。できることなら医療介入を避け、問題があった場合に「医療の力」を借りようと決めた。

不思議なもので、「自然排出を待とう」と心が固まったその夜、出血量が一気に増え、陣痛を思い出すような腰回りの痛みがやってきた。

自然排出がはじまる。
流産の診断を受けた翌日のことだった。

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筆者
Roma

2児の母。結婚、事実婚、シングルマザー、年下パートナーとの再婚を経て、ありのままの自分で居られる場所にたどり着きました。
遠回りな人生の中で思考してきたアレコレ、パートナーシップ、子育て、海外での教育などについて、これまでの経験をもとに綴っています。
どんな出来事にも学びあり。すべての女性がナチュラル&ポジティブに人生を謳歌できますように!

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